HomeMenu
    ←

    雅正庵 創業時から続くお茶を伝えるこころ、
    製茶問屋だからできる菓子づくり

    photo

    雅正庵 創業時から続くお茶を伝えるこころ、製茶問屋だからできる菓子づくり

    山あいに茶畑が広がる日本一のお茶の生産地、静岡。朝夕の寒暖差と山霧が、深く美味しい茶葉を育くむ。
    お茶の歴史は古く、1244年頃に聖一国師(しょういちこくし)という高僧が宋(中国)から持ち帰った種を蒔いたのがはじまりといわれている。

    photo

    「小柳津清一商店」は、そんな静岡でも有数の製茶問屋であり、お茶メーカーだ。昔からつきあいのある農家さんより茶葉を仕入、自社で仕上げ加工から、袋詰め作業、販売までを行っている。

    抹茶スイーツでお茶離れに起死回生を

    photo

    静岡ではお茶離れや茶農家の後継者不足などが原因で、昭和50年代をピークにお茶の生産量が落ちている。
    そこで小柳津清一商店が「もっとお茶に親しんでもらいたい」「お茶の素晴らしさを広めていきたい」と始めたのが、抹茶やほうじ茶を使ったお菓子づくりだ。2006年にお茶とスイーツのブランド「雅正庵」を立ち上げ、実店舗をオープン。2008年に開店させた2号店「雅正庵 千代田店」ではカフェも併設し、お茶の美味しさを直に広めてきた。

    ブランド立ち上げ時から人気No.1の座を保ち続けている生クリーム大福「鞠福」は、現在年に約73万個販売され、モンドセレクションの金賞と国際優秀品質賞を3年連続で受賞。また、バウムクーヘン「CHIYOの和」は、楽天市場のスイーツ・お菓子ランキングや、Yahoo!ショッピングのバウムクーヘン人気ランキングで1位に入るほどの人気ぶりだ。

    photo

    小柳津清一商店のECサイトは「雅正庵」の名を冠している。そこにもまた「お茶の素晴らしさを広めていきたい」という思いが流れているのだ。
    そんな雅正庵のバックヤードを支える人たちに会いに、静岡へ向かった。

    雅正庵を引っ張る、入社1年目の若手ホープ

    まずお話を伺ったのは、ECサイトの受注からお客様対応、商品企画、広告企画、社長秘書までをこなす相川真司さん。

    photo

    EC課 相川真司さん

    相川さんは静岡に生まれ育ち「静岡の地場産業を手がけている会社で働きたい」という動機から、2016年に入社。その後1年もたたないうちに大事な仕事を任されるようになっていたという。

    相川さんの1日

    7:40
    出社。お客さんからの問い合わせメールと昨日の売上をチェック。
    8:50
    社長と打ち合わせ。
    9:30
    受注処理を開始。楽天のサービス「あす楽」の当日出荷分の処理をした後、明日の出荷分を処理。午前中のうちに配送先のリストを出荷現場へ渡す。
    12:00
    デスクでお昼を食べる。
    13:00
    正午までに届いた「あす楽」の注文を再度チェックし、伝票処理。出荷現場へも顔を出し、困っていることがないかなどを確認する。広告企画の検討、楽天市場など各ショッピングモールとのやりとりなど。
    15:30
    各お客さんへ配送完了のメールを送り、この日の出荷業務終了。再びお客様からの問い合わせメールをチェック。
    17:00
    商品企画、広告企画の検討。17時ごろになると相川さんの手が空くということを知っている業者から、一斉に電話がかかってくる。
    18〜21:00
    その日の仕事が終わり次第、業務終了。

    「お茶をのむ時間はお昼の時ぐらい」というほど忙しい相川さんだが、お客さんからのメールや電話には、丁寧に対応している。

    「誰でも買いやすいサイトを目指しているのですが、どうしても年配のお客様などから『注文の仕方がわからない』『備考欄の入力の仕方がわからない』などといった電話を頂きます。そういう時は、とりあえず注文だけ入れておいてくださいとお話して、私の方で個別に対応しています」

    相川さんのきめ細やかな対応を支えるのは、みんなが笑顔になれる商品を1人でも多くの方に届けたいという気持ちだ。

    「お菓子には人を笑顔 にする力があると思うんですけれど、買えなければ誰も楽しめないですよね。そのために買いやすいサイトを考えたり、気軽に買える価格の商品を出したり、学生割引を取り入れたりしています。そうすることで、子どもから大人まで楽しめる店を作っていきたいと思っているんです」

    決め手は味。仕入は勝負だ。

    そんな「笑顔になれる商品」の決め手になるのは、味。
    それは小柳津清一商店の創業以来のこだわりでもある。

    「会長の小柳津清一は、農家さんのもとへ通ってお茶のことを勉強し、仲買をしながら創業した人でした。研究会を作り、どうやったら美味しいお茶が作れるのかをみんなで考えるということもやっていたそうです。2代目の現社長も、味に対するこだわりは相当強いですね。うちの仕入課のメンバーは、毎日、社長命令でナポレオンというトランプゲーム をするんですよ。お茶の仕入にはカンや周りを見る力、商品を見定める力が必要なので、勝負運を鍛えなくてはいけないんです」

    仕入の際には「拝見」 という、お茶の品質や味、香りを見る作業がある。
    まず、盆の上に茶葉をのせて色や形を見定め、お湯をそそぎ、匙ですくってお茶を味わう。そして最後に水色(すいしょく/お茶の色)を見る。こうした一連の作業をわずか数分の間にこなし、値段やタイミングを見計らった上で買うか否かを決めなくてはならない。仕入は、まさに勝負の世界だ。

    製茶問屋だからできるお菓子づくり

    そこまでお茶の味にこだわるからこそ、お菓子の製造は、ほぼすべて自社で行っている。

    「抹茶の品質は号でランク付けされているのですが、うちの抹茶スイーツには自社で挽いた『抹茶65号』を使っています。これが高いんですけれど、そこは製茶問屋なので中間マージンがかからない分、いい原料で作ったお菓子をリーズナブルに提供できます。すべての行程を自社で行うこと によって鮮度も保てますし、品質管理もコントロールできます。そこはうちの強みですね」

    じつは以前、イタリアンレストランでシェフをしていた経験もあり「ピザなら誰にも負けないぐらい上手いです」という相川さん。食に対するこだわりも強い。現在は工場長の佐原正樹さんとともに、お菓子の開発にも携わっている。相川さんが特にこだわっているのは、原料だ。

    「なるべく添加物を使わず、安心できる材料で作りたいですね。たとえばバウムクーヘンには、静岡の清水養鶏場さんのブランド卵『美黄卵』を使っています。というのも、やっぱりお菓子はお子さんに安心して召し上がっていただきたいんです。 ネットのレビューを読むとバウムクーヘンが固いというご意見もありますが、それはバターを使っているから。柔らかくするためにはマーガリンを使えばいいのですが、バターを使いたいのでレシピを変える気はありません。ただ、バターを使った柔らかいバウムクーヘンは考えています」

    ソフトな印象の相川さんだが、信念のあるところはゆずらない。

    売上を100倍以上伸ばした施策とは?

    photo

    母の日のためのラッピング。お菓子を竹籠に詰め、風呂敷に包んでくれる。

    お客さんの意見を反映して生み出された工夫もたくさんある。 ライトな色合いの包装は贈答用にそぐわないという声から生まれた、特別な日のためのラッピング。
    バウムクーヘンのフォンダン(砂糖がけ)が甘いという声から生まれた、フォンダン無しのバウムクーヘン(楽天市場限定)。
    フォンダンが溶けるというクレームから生まれた、フォンダン部分に触れないトレイと包装。
    なるべくコストを抑えお客さんに還元するため、資材を安いものに変えたり、広告費を削減するなどの工夫も行った。そういった数々の施策を重ねていった結果、2年で10倍以上も売上が伸びたという。

    また、相川さんが当初から取り組んできたのが、お茶やギフト商品の売上を伸ばすことだ。

    「当初は売上の90%をバウムクーヘンが占めていたので、お茶とその他菓子、ギフト商品のPRにも力を入れ、今はバウムクーヘンが50%、その他菓子が20%、ギフト商品が20%、お茶が10%、というところまできました。今の雅正庵は、まだお菓子屋さんのサイトだと思われているかもしれません。それでも昨年に比べてお茶の売上が10倍にまで伸びたので、成果が出始めてきたと思います」

    お茶のある風景を残したい

    「やることはまだまだ一杯ある」と相川さんはいう。

    「今、後継者が不足しているために茶畑を引き継ぐ方がいないんですね。そうなると静岡の茶畑が10年後、20年後には無くなってしまうかもしれない。私はそれを止めたい。茶畑のある風景を残していきたい し、茶産業も絶対に守っていかなくてはいけないものだと思うんです。そのためにもお菓子を通じてお茶の販売に力を入れ、みなさんにお茶に親しんでいただいて、農家さんに収入が届き、後継者の方たちが農業を続けられる環境をつくっていきたいと思っています」

    ヒット商品の裏にこんなに熱い思いがあったなんて、と感動させられてしまう。
    相川さんは今、世界を視野に入れている。

    「雅正庵はECの世界ではまだまだ小さいと思っているので、これから世界に出ていくことも考えて大きくしていきたいですね。そのためには、まず自分が動かないと。みんなに『ついてこい』と言うためには、自分が先頭をきって走らなければいけないと思うんです。今は辛抱が続く時ですが、走り続けます」

    店長経験をサイトに生かす、マルチなバックヤードのひと

    続いてお話を伺ったのは、ECシステムを担当している杉山梨乃さん。もともとは雅正庵千代田店の店長として入社し、現在は産休を経て、パートさんとして働いている。

    photo

    EC課 杉山梨乃さん

    「この会社に入って、毎日お茶をのんで、子どもにも恵まれて、その子もお茶が好きといってくれているので、うれしいなと思います。うちの子は今2歳半になるんですけど、薄いお茶をいれると『うす』といって怒るんですよ」

    産休が明け、雅正庵に戻るつもりで復帰した杉山さんだったが、ECサイトの本格始動に携わることになり、本社へ。当時はシステムからページの作成、商品構成にまで関わり、現在はECシステムの設定とサイトのコーディングをメインに担当している。

    「初期の頃は、何をしていたのか記憶にないぐらい忙しかったですね。クロスモールの設定も、日々デバッグの連続で。それでも、よく1ヶ月で運営できるようにしたねと言っていただけたんですけれど(笑)」

    杉山さんはそういって、曇りのない顔で笑う。
    以前は店長をしていた方がECサイトのシステムを一手に引き受けているというのは、ちょっと驚きだ。前職では課長を務めていたというから、頼れる人なのだ。そのせいか、よく同僚から相談も受けるという。

    「同僚とは、よく話をするようにしています。お昼にコミュニケーションをとったりとか。私は社歴が長いこともあってよく相談を受けるので、アドバイスもさせて頂いています」

    お客さんの声が新商品のアイデアに

    雅正庵のお菓子の味を決めているのは、工場長の佐原さんだ。
    EC課のメンバーから、佐原さんへお客さんの要望を伝えたり、お菓子のアイデアを提案したりすることもある。

    「佐原は『味にインパクトがあった方がお客様の記憶に残る』と、すべて自分の舌で確かめながら作っています。その分こだわりも強いので、私たちからの提案を却下されることも多いんですけれど(笑)。でもやっぱり、佐原が作るものは美味しいんですよね。バレンタインの時は、お客様から上がってきた『いろんな味を楽しみたい』というご意見を伝えて、佐原と相川に『抹茶×大納言』や『チャイ×ナッツ』のような、お茶とフレーバーの掛け合わせが楽しめる『ちょこの実』という生チョコを作ってもらいました」

    抹茶やほうじ茶を使用したジェラートや、抹茶を練り込んだパスタ など、雅正庵千代田店のカフェで提供しているメニューも佐原さんが手がけている。ちょっと意外性のあるメニューも、口にするとうなるほど美味しい。たしかに記憶に残る、丁寧に作られた味がする。

    photo

    「抹茶パスタは、うちの子も大好きです。普段は食べないパプリカも、佐原の作ったドレッシングをかけると食べるんですよ。ママの会社のサラダは美味しいからって」

    お茶をのんで「美味しい」って思ってもらえたら

    店長を3年間務めた経験は、今の仕事にも生かされている。

    「Twitterとメルマガを担当させて頂いているんですけれど、Twitterは営業的ではなく、親しみやすい感じを心がけています。お店で起きたことをつぶやいてみたり、雅正庵のことをつぶやいているお客様に『ご来店くださったんですね。ありがとうございます』と話しかけてみたり。たまにはお客様との会話を楽しみたいので、リプライをいただいたりするとうれしいなあと思います。実店舗を経験していなかったら、こんなにフランクになれなかったと思いますね」

    雅正庵のサイトには、杉山さんが店舗で行ってきたことが随所に反映されている。

    「お店でお客様にお茶をお出しすると『このお茶美味しいけど、どうやっていれたの?』と聞かれて、よく説明していました。ネットではそういうことができないので、ページにいれ方を載せるようにしました。また、お茶をお送りする時にもいれ方のしおりをつけるようにしています。ECサイトの仕事はレビューやメール、電話からしかお客様の反応が見えてこないんですけれど、お顔が見えない分なるべく声を聞くようにして、お客様の微笑んでいる顔を想像しながら作業しています」

    photo

    店長として働いていた時、お茶を出すと「美味しい」といって喜んでくれるお客さんがいた。お茶を買ってくださるお客さんがいた。今、杉山さんがECサイトでやろうとしていることも、そういうことなのだ。

    杉山さんが語る「お茶は人生の一部」

    「人生の一部というとおかしいかもしれないですが、もうお茶のない生活は考えられないですね。子どもの頃におばあちゃんがいれてくれた薬みたいに苦いお茶も、仕事でいれるちゃんとした水色のお茶も、自分が好きでいれている薄いお茶も、子どもにいれるお茶もーーもう私の人生と切り離せないものになっています」

    http://www.gashoan.com/