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    monday moon
    素肌と気持ちに「安心感」を届けるコスメ

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    瀬戸内海に面した四国の玄関口、徳島市。島の中心へと連なる四国山脈、雄大な吉野川、南には太平洋という自然あふれる環境に囲まれたこの地域は、伝統工芸として藍染めが盛んなことで知られる。市内の穏やかな街並みは、夏になると阿波踊りで賑わうのは皆さんご存知だろう。この豊かな環境で精製されたナチュラルケアコスメを取り扱うのが、「monday moon(マンデイムーン)」。主に手作り石鹸と化粧品の材料を取扱っており、ナチュラル志向の女性から高い人気を集め、女性誌や大手クチコミサイトでも評判の良い人気ショップだ。

    その始まりは、ひとつの石けん。

    どうして徳島でナチュラルコスメの人気店が生まれたのだろう?

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    その歴史を紐解くと、同ショップ運営会社であるmono株式会社の創業者の青木陽子さんの我が子への思いが発端となる。アトピーで肌の弱い我が子に対して、青木さんは独学で石けんの作り方を学び、肌にやさしい素材を選びぬいて、石けんを手づくりした。それによって、なんとアトピーが約2年で完治したという。もともと自家用として作り始めた石鹸だったが、「こんなに効き目があるなら」と手づくり石けんをおすそわけしていくうちに、「気付いたらお店になっていた」という。そして現在はインターネットを通じて全国各地の方々に向けて、末永く愛用されるアイテムとして届けられるようになった。初めての石けんを作った2005年から12年。市内にオフィスを構え、15人の従業員とともにビジネスを展開している。

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    青木社長の女性的な視点は、企業としての成長だけでなく、地域社会へも向けられている。monday moonの取り組みとして、お腹の空いた地域の子どもたちに食事を振る舞って居場所を作る「こども食堂」 というボランティア運動に参加している。会場は、徳島市内の空きビルを利用した「ミタスカフェ」。イベントは定期的に開催され、地域に貢献している。この日は小学生を中心に100人以上が集まり、ボランティアスタッフによる餃子や焼売などが振る舞われた。手づくりの点心を子どもたちが美味しそうに頬張る笑顔があふれる会だった。

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    monday moonのアイテムは、フェアトレードの素材を使ったスキンケア製品を各種取り扱い、手作りコスメの原料まで並ぶのが特徴。なかでもいちばんの人気製品は、手頃な価格で高品質のアルガンオイルだ。海外の問屋から直接輸入しているので値段が抑えられているのだが、コストパフォーマンスの秘密はそれだけでない。円滑に周るための社内体制や安心感のある顧客サポートなど、monday moon独自の取り組みがあるという……。では、オフィスを覗いてみよう。

    受注、製造、発送。すべて内製

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    monday moonのオフィスは、徳島駅から車で10分ほどの閑静な住宅街の一角にある3階建てのビル。1階は総務とデザイン室、2階は製品開発と商品作成 、3階は梱包作業と在庫管理という枠組み。どこも、すみずみまで清掃の行き届いた清潔感のあるオフィス。材料の輸入、製品の精製、注文の受注、梱包して発送という、業務に関する一連の作業がワンストップで行えるようになっている。外注せず工程がオールインワンになっているので、社員間での意識共有が高いのだという。

    女性向け化粧品を取り扱うこともあり、社員の女性率は高め 。仲間意識が高いので、活発に意見が交わしやすい雰囲気もある。またオフィスに「社長室」が存在しないため、社長と社員も直接話ができる機会が多いのも社内のオープンな雰囲気に貢献する。では、バックヤードの中心となる3名に個別に話を聞いてみよう。

    monday moonのバックヤードの工程 注文から発送まで

    1
    各ショップ(自社サイト、Yahoo!、amazon、楽天)から注文が入る
    2
    注文、商品の問い合わせ対応を行う(永井さん、伊勢さん)
    3
    出荷確定した注文をプリントアウトして出荷場へ(永井さん)
    4
    注文と照らし合わせてピッキング、検品、梱包して発送(紀本さん)

    対面することなく接客

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    お客さんとの最初の接点を担当するのが、永井あゆみさん。担当は、オンラインショップから送られてきた注文のメールの確認だ。注文の文面というのは欲しい商品の個数が大半だが、その中でもお客さんの気持ちが込められている箇所があるという。
    「備考欄にはそれぞれのお客様の気持ちが記されているんです」
    商品に関する個人的な質問が書かれているので、「密なコミュニケーション」が始まるスタート地点ともいえる。

    つまり、会社の顔、看板、入口となる役職ともいえる。それもあって永井さん自身は「ひとつ間違えるとまた来てくれないかもしれない……」という緊張した意識で対応を行っている。

    ときには怒りを露わにするお客さんからの連絡もあり、そういったやりとりのあとはどうしても気持ちが沈みがち。しかしどんなに落ち込んだとしても、次に対応するお客さんはまったく別の方だ。失礼な対応はできない。そこに気付いた永井さんは、毎回気持ちの切り替えを意識的に行い、数分前の出来事を引きずらないようにしている。

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    永井さんは仕事をしているうちに、ひとつコツを憶えた。

    「電話の対応では相手の表情が見えません。もちろん相手も私の顔が見えない。そこで相手と気持ちの通ったコミュニケーションをするために『声に表情を載せるようにしている』ということを意識してみました」

    見えない相手の表情を知りたいので、まずは自分から表情を乗せた声で喋る。そうすることによって、丁寧さがいいのかフレンドリーさがいいのか、相手の好みを察しやすくなり会話のバランスを調整しやすくなったそうだ。表情を乗せるのは声色だけでなく、ときにはデスクで頭を下げて真剣に申し訳なさが伝わるようにすることもあるとか。

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    そういった気持ちのこもったやりとりができるのはなぜなのか。

    「それは組織の一員として、会社を回していこうという意識が出来たからだと思います。入社時はデザインの補助、そこから製造や出荷など社内の業務を一通り経験しました。それによって各部署それぞれの苦労がわかり、全体を回していこうという意識に至りました」

    トラブルが起きたときも、全体を俯瞰して考えながら対応できるようになったのだ。

    「今後はトラブルを事前に対処できるようになりたい」という目標も語り、この仕事のやりがいを聞くと「メールでやりとりをした方から注文が再度来ると嬉しいです」と答えてくれた。キーボードのみのコミュニケーションでも気持ちが伝わった結果なのだ。

    専門知識が必要な問い合わせ対応にはどうする?

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    そしてmonday moonの問い合わせ担当を支えるもう一人が、商品開発を担当する伊勢奈緒美さん。学生時代に化学を学んだ知識を活かして、monday moonの新製品の開発に携わる。流行に乗ったアイテム、お客さんの要望に合わせたアイテムなどを、社長と相談しながら材料を仕入れて、ラインナップに新たな彩りを加える。

    永井さんが語る伊勢さん

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    永井さんに来たお客さんからの問い合わせの中には、商品の成分など細かい質問もある。そういった場合は、専門知識のある伊勢さんにメールや電話を引き継ぐ。例えば、洗顔料の粒の大きさをミクロン単位で答えるなどの科学的な内容を担当している。

    伊勢さんも永井さんと同じように「インターネットからの注文は顔が見られない」ことを問題として考えている。そこで伊勢さんの心掛けていることは、メールの文面をコピー&ペーストせずに毎回キーボードで個別に書くこと。それによって「女性ならではのやわらかで気持ちのこもったやりとりができるようになった」という。

    オンラインショッピングに不慣れなお客さんからの問い合わせもある。たしかに商品の点数が多いため、製品の魅力が伝わりにくい部分がある。そのため、言葉を伝えるためにいくつもの施策を練っている。

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    またお客さんの行き先を先導するかのように電話口に出ている。

    「お客様との対話は『出来ません』で終わらせるのではなく、代替案を提示するようにしています。提案すると納得してくれる場合が多いですね」

    それもあって、電話で問い合わせを頂いた場合は、お客さんの悩みを聞いてから製品を薦めるという。

    「新規で購入していただいたんですが、その後も買ってくれるようになりました」。

    そして問い合わせの電話やメールで伊勢さんを指名した連絡も増えたという。

    機械でなくて人でできることをしている

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    永井さんがプリントアウトした注文のメールを受け取るのが、出荷担当の紀本理巴さん。

    「私の仕事は梱包ですが、お客様に商品が安全で喜んでもらえるように届けたいと思っています」

    受け取る人に喜んでほしい、と言う気持ちを込めながら、注文に合わせて商品をピックアップして、検品、梱包を行う。ただ梱包するわけではなく創意工夫も盛り込んでいる。

    「梱包の仕方を工夫して、開けやすいようにリボンを付けて工夫をしているんです」

    出荷担当者たちは、発送する商品に髪の毛などが混じらないよう、全員が白衣に着替えて作業にとりかかる。出荷担当者は、お客さんとのやりとりが見えづらい部分だが...

    「梱包した人が注文書にハンコをつけて、少しだけ存在をアピールしています。そこがわたしたちのモチベーションにつながっているんですよね」

    梱包へ

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    1日に数百個、注文のあった商品を数名で梱包する。作業量はとてつもないが、そこでの心掛けをこう語った。

    「梱包や発送は”作業”になってしまいますが、お客様にとってmonday moonとはひとつだけ。お客様とわたしたちのやりとりは一対一です。だから、絶対にミスが出ないように心がけています」

    その気配りの積み重ねによって、品質マネジメントシステムの国際規格ISO9001を取得するまでに。出荷のクレームはないという。

    「クレームがないのはいままでの積み重ね。今までの担当者のおかげです」と謙遜し、周りの人に敬意を忘れないことから社内が円滑に周っていることが覗えた。こういった雰囲気ができたのも社長の気さくな人柄の影響も大きい。

    直接会わなくても生まれる「安心感」

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    お話を伺う中で、何度も出てきたキーワードが「安心感」。monday moonが扱うコスメ商品は直接肌に塗るものなので、「安心感」を持ってもらえないと、お客様に使いたいとは思ってもらえないのだ。インターネットでの細部がどんなに簡略化されても、結局は人と人とのやりとり。商品や対応からあふれる人間味によって安心感が得られることを追求したのが、monday moonならではのサービスなのだろう。

    http://www.mmoon.net/

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