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    仕事は楽しくなくちゃ意味がない!
    PBIのバックヤードは最高のコミュニケーションを目指す

    メンズアパレルのネット販売を手がけるピー・ビー・アイ(PBI)。通販で高い人気を誇るメンズファッショブランドのSILVER BULLET(シルバーバレット)といえば、わかる人も多いだろう。

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    楽天市場、ヤフーショッピング、ビッダーズ(現Wowma!)などの各モールで全国区的な人気を得ていて、楽天市場ではショップ・オブ・ザ・イヤー2007、2014を獲得したり、メンズファッション誌「BITTER(ビター)」とコラボレーションして渋谷の109メンズにリアル店舗を出店、2016年にはプロバスケットボールBリーグの横浜ビー・コルセアーズphoto オフィシャルショップを運営するなど、目立った活動を続けているブランドだ。

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    20店舗にも及ぶ、PBIのショップ展開。また各モールでの受注とカスタマーサービスを担うのは、なんと4人という少人数体制。それでもWEBサイトでは、お客様から寄せられた質問に答える「コーディネート相談室」を展開するなど、他にはないサービスを行っている。

    少人数でこれだけのことを果たしている、その裏側はどうなっているのだろう..?舞台裏を知るべく、東京・六本木にあるPBIのバックヤードを訪ねた。

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    オフィスがあるのは六本木の駅すぐの中心部。
    黒とシルバーを基調としたオフィスの中には最新のアイテムが所狭しと並ぶ。

    バックヤードの業務は、注文の処理、商品交換や返品対応、商品の問い合わせに関する電話対応など多岐にわたる。

    PBIバックヤードの一日

    9:30
    出社。注文系のメールを返信
    10:00
    始業。受注処理を開始。
    11:00
    顧客対応
    12:00
    受注処理が終了。返品された商品を開封、交換対応なども合わせて行う。 ほか、SNS投稿として新作発表やコーディネートなどを行う。最近はInstagramに力を入れている。
    13:00
    昼休憩。ランチにはあまり出向かず、お弁当を社内で食べる事が多い。
    14:00
    二度目の受注処理。15時までの注文は即日発送を行っている。
    15:00
    顧客対応など。メールと電話の対応や、データの集計作業など。キャンセル率などを集計し、会社の全体会議で共有する。
    16:00
    発送のため、倉庫とやりとり。倉庫は平和島にあり、毎日電話でやりとりをしている。
    17:00
    発送終了後は自由時間。SNSの画像を作ったり、それぞれのやりたい仕事や持っている仕事を行う。
    19:00
    終業

    内部は一課、二課、三課、四課と分かれる。一課はSILVER BULLETを運営する課(楽天、Yahoo、Wawmaなど)。二課は自社のプライベートブランド店舗を運営する課(FUGA、CIVARIZEなど)。三課はレディースや一部、外部発送する店舗を運営する課(アマゾンFBA、ショップリストなど)。四課は雑誌などと連動した通販サイトを運営する課(BITTERなど)となっている。

    果たして、どうやって4人でやり遂げているのだろうか?その秘密をカスタマー部署リーダーの無津呂さんに伺った。

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    一大ブランドのバックヤードを支える無津呂さんは、3年前に入社し、PBIのバックヤードに大きな改革をもたらした立役者だ。いまは「仕事が楽しくてしょうがない」と語る無津呂さんだが、入社した3年前の状況は、まったく違うもの だった。

    もともとアパレルの販売から未経験で入社した無津呂さん。

    「販売業では、ひたすら接客やレジをやっていました。もともと人が好きなんです。人と話すのも好きだし、協力して何かを達成するのが楽しいタイプ」

    と語る。アルバイトから社員になったきっかけで、カスタマー部のリーダーになった。この機会に、カスタマー部の改革を行おうと決意した。当時もメンバーは4人。一年間、膨大な仕事量に翻弄され疲弊していた無津呂さんは、リーダーとなって出来た部下たちに「あんなにつらい気持ちになってほしくない」という想いで改革を行った。そのために無津呂さんがまず行ったのが、

    無津呂「CROSS MALL(バックヤードサポートサービス)での運用を全部見直して、使えるものを洗い出していきました。今までは仕方なくやっていたけど、“この作業が面倒くさいな”と思ったり、時間がかかったりするところを洗い出して、他のやり方が出来ないのか、模索していったんです」

    PBIの繁忙期は福袋や楽天スーパーセールが行われる時期。しかしそれ以外の時期も、業務が山積みになっていることが恒常化していたのだが、改めてシステム運用を見直してみると、業務を効率化できるツールがいくつもあった。

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    ※当時の福袋画像
    PBIのセールでは、オリジナルアイテムを入れる「福袋」が人気。福袋のために商品開発をするほどの力の入れよう。アクセス多数で、当時の楽天のサーバーを落としたこともある人気イベント。

    例えば、お問い合わせメールの返信について。

    無津呂「以前は、個人個人がメーラーからお問い合わせに返信していたので、文面を共有することができなかったんです。メールのテンプレートを統一し、CROSS MALLに登録することで全員が見れるようにして、共通のものを使うようにしました。そもそも、お問い合わせメールというのは2種類に分かれるので、その分類をすればより早い対応ができます」

    2種類の問い合わせ。ひとつは、注文内容に関するもの。住所変更やキャンセルなど、ノウハウがなくても対応可能なものだ。無津呂さんが行った改革は、注文系のメールはすぐに返せるようにテンプレ化し、通販部全体で共有するというもの。これによって迅速な対応が可能になった。

    無津呂「注文系はスピードが命。お客様が、ちゃんと変更できるのか、ちゃんとキャンセル出来るのか、と不安になっていらっしゃるので。対応が遅いと、メールの上に電話まで頂くことになってしまったり。余計な手間をかけさせないよう、お問い合わせには朝一番に対応できるようにしています」

    各々のメーラーではなく、共通のシステムを使うことで、バラバラに動いていた通販部スタッフの心がまとまり始めた。新しいシステムを導入するのではなく、既存のシステムの見直しによって行うことができたことはコスト面でもメリットがあった。

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    そしてもう一種類のお問い合わせは、商品やコーディネートに関する、マニュアルでは答えられないこと。 商品の知識や顧客対応スキルが試される。

    無津呂「お客様からのお問合わせはさまざまで。取り扱っているブランドも種類が多くて、とくにフーガシヴァーライズなど、お兄系のファッションではサイズ感や素材感を気にされる方が多いですね。在庫がある倉庫に電話をして、スタッフに“どんな感触?”と聞いてお答えすることもあります」

    ネットでは伝わらない、“サイズ感”などを伝えるために、スタッフが洋服を着用し、写真を送って確かめてもらうこともあるという。ユーザーの中には、ネット通販を使ったことがない、またはネット通販を信頼できるのか不安に思う方も多い。そういった方の不安を解消するために、親身な対応を心がけている。

    男性のお客様からの問い合わせで、一番多いのが“サイズ感”について。商品の送付・返品を繰り返し、理想のサイズを求める人も多い。

    「お客さまの中には、10代から20代で、ネット通販を使ったことがない方も多くいらっしゃるので、その時にはお電話で説明しています。皆さん、雑誌やインスタで憧れのモデルを見て“この服が欲しい”といってくださるんです。こうなりたい!という気持ちがすごく伝わってくるので、その手助けをしてあげたいと思っています」

    返信においても、機械的な返答ではなく、絵文字を使ったり、写真を添付して親しみやすい文面にしたり…。photo 顧客からの反応も上々だ。こうして親身な対応をすることで、よりたくさんの人がネット通販を利用するようになってくれるのではないだろうか。

    顧客を思う心が開いた「コーディネート相談室」

    PBIの徹底した顧客思いの対応が現れているのが、WEBサイトで展開されている「コーディネート相談室」photo 。通販部に寄せられる、お客様の声は、注文に関することだけではない。「今年は何が流行るの?」「うまく着こなせない」「もっとオシャレになりたい」そんな思いに応えるために、通販部が立ち上げた企画だ。PBIのスタッフたちが、メールで寄せられた読者の悩みに答えていく。

    無津呂「年齢や身長、体重、悩んでる部分を送っていただきます。お電話でも“どんな風に合わせればいいか”というご質問を頂くこともあって、お客様によっては1時間半くらい対応することもあります。いただいた質問は、シルバーバレットチームに相談して、みんなで一緒に考えてお答えしています」

    思い出に残っているお客さんは?

    仕事を楽しくする仕組みづくり

    無津呂さんが業務フローの改善とあわせて行ったのが、カスタマー部のメンバーのコミュニケーションを増やすこと。業務のツールやシステムを改善するだけでは全体的な改善にはつながらない。人とのコミュニケーションが大きな役割を占める。

    無津呂「当時のカスタマー部も、今と同じ4名でしたが、スタッフ間の意志の疎通が一番難しかったんです。スタッフ間で引き継ぎが出来ないとお客様へのご連絡が遅れたり、重複したり、それがクレームに繋がったり…」

    メール対応に関しては、いまではどのスタッフがメールを対応しているのか進捗状況がわかる機能“メールディーラー”を導入し、全員がリアルタイムで状況を把握して対応ができる運用を作れたことがチームワーク向上に繋がった。

    無津呂「今まで時間がかかっていたカスタマー処理の時間を短くすることで、SNS投稿を考えたりと、仕事の幅を広げることや、他の部署の人と連携することができるようになりました!やっぱりお客さまの声をこんなにたくさん聞いているのはわたしたちカスタマー部だけという自負があるので、お客さまの店舗に反映してもらえるようになったのは嬉しいですね」

    業務改善にあたっては、システム運用の見直しはもちろん、積極的に業務中の会話を増やしたり、ミーティングを行うなど、チーム内でのコミュニケーションを増やしている。
    このように様々なツールを活用して自分たちで運用をつくっていく事を心がけている。

    無津呂「コミュニケーションを増やすと、部の雰囲気がすごく良くなるんです。やっぱり人と繋がってないと何も生まれないし、そうやって生まれたものから売上も上がっていくんだと思います。一人では何も出来ないので、協力していかないと。そういうところをすごく大事にしています」

    いまは毎週金曜にカスタマー部で定例会議 を行っている。チームの課題や、それぞれの仕事についてアドバイスを行う、建設的な話し合いを行う場だ。各々のメンバーが設定した「処理の自動化」や「クレームを減らす」などの月ごとの目標を、メンバー同士が目を配り合い、達成できたのかどうかを話し合う。

    「お客様からの問い合わせを自分が理解しているのかどうか、チームで確認をとりながら対応できたのは良かった」
    「問い合わせ対応の時、言い回しには自分の癖が出てしまいがち。良い対応をするためには、他の人の対応を見て、“この言葉いいな”と思ったら真似しちゃうこと」

    など、真摯な話し合いがなされている。しかしここまで至るには、かなりの苦労があったという。

    無津呂「最初はみんな、なんだろうなって感じだったと思うんです」

    業務改善を行わなければ、スタッフが楽しく仕事に向かうことができない。しかし「みんなで協力して仕事をしよう」とただ言っていても、スタッフの心はひとつにならない。そこで無津呂さんが行ったのは、「目標を設定する」という具体的な行動だった。

    無津呂「すごく忙しくなる、楽天スーパーセールの時に、初めて目標を設定しました。例えば受注のデータを何時までに送るというようなこと。最初はスタッフの間でもやらされてる感があるし、“こんなの意味あるの?”ってみんなが思っていた。でもやってみたら、最終的にその目標を全部達成できていたんです」

    そこからチームの意識が変わった。今までは考えられなかったことだ。

    無津呂「セール期間の一週間を振り返ったときに、みんなが楽しかったって言ってくれました。その時に初めて、みんなが目標を設定して達成することに楽しさを感じてくれて。そこから変わりました。チーム化というところの大事さを理解してくれたことで、最初はバラバラだったみんなのなかに“一緒に仕事をしている”という意識が生まれたのがうれしかったですね」

    ちからを合わせて目標を達成すること。その達成感によって、強い連帯感が生まれた。例えば、入社2年目というのは、一通り業務を覚えて、慣れてしまったがためにミスが増えるなど、中だるみする時期。モチベーションが下がっているスタッフに、どうすれば仕事が楽しいと思ってもらえるのか?

    無津呂「でも目標を立てて達成するというミッションがあれば、その時期を越えていけるんですね。そうやって危機を乗り越えてくれたスタッフもいて、今は自分から協力することの大事さを他のチームに伝えてくれるようになりました」

    個々の力が強くなることで、バックヤードの部隊も強くなる。達成感を覚えることで、自分の強みというものも見つけられたという。

    無津呂「小学生の頃、先生に“目標を立てなさい”と言われてやってみたりしましたよね。そういうのってすごく大事だなと思いました。いまもチームに言っているのは、まずはやってみてほしいということ。やってみてダメだったらやめればいいし。そこにとどまらないことを大事にしています」

    バックヤードのスタッフも、いまでは独自の目標を立て、その目標に向かって邁進している。そもそもこのミーティングの開催も、2016年になって始めたこと。一歩一歩着実に改革を進めてきた。

    無津呂「ミーティングを始めたばかりの時は、やっぱりみんな慣れていないから、うまくしゃべれなかったんです。自分の感情を伝えることができなくて...それが回数を重ねるうちに、だんだんお互いの気持ちがわかるようになってきたんです。」

    ミーティングの内容は活発そのもの。各スタッフがお互いに目を配り、誰かがつまづいていたら助け船を出せるような協力体制を築き上げている。今月の目標は「社内でいちばんキラキラした部署になること」と無津呂さんは言った。

    無津呂「いままでは目の前のことで精一杯だったけど、いまは来年やりたいことが見えるくらいの余裕が出来た。自分が、部署が、会社が1年後どうなっていたいか、文字にすることでわかるから、みんなでやってみようよ」

    とスタッフたちを鼓舞するのが、無津呂さんの役割だ。

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    PBIのブランドは20、Instagramのアカウントだけでも7つある。SNSの投稿を通販部が担うことも多いが、PBIでは新作商品からコーディネートまで、バックヤードが自由に投稿している。

    無津呂「普通は広報などがすることなのかもしれませんね。ですが、わたしたちにしか書けない文章もありますし、何をお客様が知りたいかっていうのはわたしたちが一番わかっていることだと思います。

    ほかにも、通販部がSNS投稿を行うメリットがある。それはいったいなんだろう?

    無津呂「お客様からコメントやダイレクトメールを頂いた時に対応ができるのは通販部ならではです。また、わたしたちにとっても、新作情報やイベント情報を把握できるし、商品についても詳しくなれるというメリットがあります」

    これからのテーマは「自動化」と語る無津呂さん。予め設定をしておけば、注文が来たら、処理不要でお客様に出荷される自動システムだ。自動化でルーティンワークに時間を取られることがなくなれば、ますますお客様と真摯に向き合う対応に時間を使うことができる。

    無津呂「お問い合わせの対応で、気をつけているのは必ず相手の立場に立って物事を考えるっていうところ。会社としての都合はこうだけど、お客様が受け取った時に、どう思うのか。その時にどうやって対応するかが、すごく大事だと考えているんです。ほかの部署の人には絶対にわからない、私たちしか感じられないところなので、すごく大事にしています」

    若い4人のチームが支える、PBIが展開するアパレルブランドのバックヤード。無機質に思われることもあるバックヤードの業務だが、無津呂さんは「こんなに楽しいことをみんなが知らないのはもったいない」と目を輝かせる。

    無津呂「4年目の今、仕事がものすごく楽しいんです。この仕事が出来て本当によかったと思います。仕事をしている時間ってすごく長いので、楽しんでないともったいないですよね。自分も楽しいから、みんなにも楽しんで欲しいと思ってるんです。わたしのこの会社での役割はそれじゃないかな。楽しくなってもらうために話を聞いたり、サポートしたり、逆に話を聞いてもらったり…としています」

    こうして培った協力体制の強みを、社内にも広めていくのが無津呂さんのこれからの目標だ。

    無津呂「これからの目標は、社内にも協力して仕事をしていく大切さを伝えること。口で言っても伝わらないので、わたしたちが実現して見せつけるしかないと思っています」

    新しいコミュニケーションの方法を得て、強くなったPBIのバックヤード。これからますますその強みを増すことで、いったいどうなっていくのか?これからのPBIが楽しみだ。

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    http://www.rakuten.ne.jp/gold/silver-bullet/pb/

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