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「ファンベース」①

2019.07.10

佐藤 尚之 氏 × 佐渡島 庸平 氏
『ファンベース』がテーマのトークセッション。

BACKYARDFES. 2018 GUEST TALK

Profile

BACKYARD FES.2018 テーマは『FAN』
ECのドキドキ感をリアルに感じるバックヤードが主役のイベント
2018.10.5-6

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GUEST TALK@BACKYARD FES.2018  

People

佐藤 尚之 氏(右)
コミュニケーション・ディレクター。(株)ツナグ代表。(株)4th代表。復興庁復興推進参与。一般社団法人助けあいジャパン代表理事。大阪芸術大学客員教授。1961年東京生まれ。1985年(株)電通入社。コピーライター、CMプランナー、ウェブ・ディレクターを経て、コミュニケーション・ディレクターとしてキャンペーン全体を構築する仕事に従事。
2011年に独立し(株)ツナグ設立。「スラムダンク一億冊感謝キャンペーン」でのJIAAグランプリなど受賞多数。
本名での著書に、「ファンベース」(ちくま新書)(最新刊)、「明日の広告」(アスキー新書)、「明日のコミュニケーション」(アスキー新書)、「明日のプランニング」(講談社現代新書)。“さとなお”の名前で「うまひゃひゃさぬきうどん」(光文社文庫)、「沖縄やぎ地獄」(角川文庫)、「さとなおの自腹で満足!」(コスモの本)、「人生ピロピロ」(角川文庫)、「沖縄上手な旅ごはん」(文藝春秋)、「極楽おいしい二泊三日」(文藝春秋)、「ジバラン」(日経BP社)などがある。

佐渡島 庸平 氏(左)
(株)コルク代表。1979年生まれ。東京大学文学部を卒業後、2002年に講談社に入社。週刊モーニング編集部にて、 『バガボンド』(井上雄彦)、 『ドラゴン桜』(三田紀房)、『働きマン』(安野モヨコ)、 『宇宙兄弟』(小山宙哉)、 『モダンタイムス』(伊坂幸太郎)、『16歳の教科書』など数多くのヒット作を編集。インターネット時代に合わせた作家・作品・読者のカタチをつくるため、2012年に講談社を退社し、コルクを創業。同社がエージェントを務める羽賀翔一が作画を担当した「君たちはどう生きるか」の漫画版が大ヒット。従来のビジネスモデルが崩壊している中で、コミュニティに可能性を感じ、コルクラボというオンラインサロンを主宰。編集者という仕事をアップデートし続けている。著書としては「ぼくらの仮説が世界をつくる」、「WE ARE LONELY,BUT NOT ALONE.」などがある。

佐渡島

早速ですが今日のテーマ「ファンベース」についてさとなおさん(佐藤尚之氏の愛称)に伺ってきたいと思うのですが、そもそも広告業界で仕事をされていたさとなおさんが、ファンベースという考え方に至ったのはどういう流れだったんですか?

佐藤

みなさんがどう思われるか分かりませんけど、広告をファンベース的な考え方に当てはめて考えてみましょうか。

「広告」はいわゆる企業が言いたいことを一方的に企業のタイミングで相手の気持ちを考えずに押し付けるという事なんですね。そういう側面があってもそれ自体は昔から凄く良かったんですね。テレビでも企業側の情報を出していく流れになっているわけですけど、それが全然通用しなくなってきたのはネットが出てきたからなんですね。

そこからは「広告」が「コミュニケーション」に変わってきたんです。コミュニケーションっていうのは、読んで字のごとく相手の気持ちを考えてやりとりし、伝えていくことです。

コミュニケーションでしばらくはこのまま行けるかなと思っていたんです。「コミュニケーションデザイン」とかっていう概念もあって。その方法で伝えていくんだなって自分でも思っていたんですけど、単に相手の気持ちを考えて伝えていくっていう事自体もなかなか伝えにくくなってほぼ無理になってきたかな。

でもそれは結果的に言うと、自分と価値観が近い友人を介して伝えていく。この人に伝えたかったらその人の友人を介して伝えていくとかそういう言葉じゃないとなかなか伝わっていかないという風にどんどん変わってきたんです。

それはソーシャルメディアの登場もあるんですけど。そういう風になっていけるその究極系で一番濃い形が「ファン」を通していきましょうということなんです。

ファンは熱量も高いですし。ファンから伝わっていく情報だったらこの時代でも伝わっていくんじゃないかっていうのが一方の入り口ですよね。

佐渡島

その考え方をご自身で変えていくことは難しい事だと思うんですけど、広告がコミュニケーションに変わって、コミュニケーションがファンに変わって、2回ご自分の考え方が大きく変わってこられたことについて、きっかけとなった出来事とか気付いた瞬間、または何かを見て考え方が変わったなどがあったのですか?

佐藤

そうですね。ネットやソーシャルを色々やってみたというのが一番大きな気付きにつながっていると思います。

ネットは、1995年に自分のサイトを作ったんです。まだYahoo!JapanもGoogleもないころから、多分、個人サイトとしては一番古いと思います。

電通みたいな会社だとやっぱりテレビの向こう側の人って見えないじゃないですか?けれどネットだと反応が如実に返ってきて相手の顔が見えてくるんですね。

すると「生活者はこんなに変化しているんだ」ということに気付きます。広告からコミュニケーションに変わるきかっけだったと思います。

そして、コミュニケーションに変わっていった向こう側に、今度はSNSも相当早めからやってバンバン発信していたんですね。広告系の人って意外とSNSもブログもやらないし、ましてや自分でやっている人って少ないんですけど、やっていくと、コミュニケーションであろうが広告だろうが、“一方的に企業から伝えていくということはなかなか難しい“というのが実感として分かってきたんですね。

流れとして「友人を介そうという」という思考一本になっていて、その後にパレートの法則みたいに実は“企業を見てくれている2割の人たちが8割くらいの売り上げ支えているんだ”という事が少しずつ見えてきたんですよ。

これはやっぱり「ファン」から介して伝わっていく構築にしたほうがいいんじゃないかという風に変わってきたんですね。

 

コミュニケーションからファンベースへ

佐渡島

なるほど。コミュニケーションからファンベースへと考えが移っていくときに、かなり早い段階でSIPS(シップス)の法則を提唱されていましたよね?

佐藤

元々広告はAIDMA(アイドマ)、AISAS(アイサス)という法則があって、これを声高に言ってるのって実は日本だけなんですけどね

AISASというのは実は電通が作ったんです。全てATTENTION(アテンション)から始まっていてます。つまり、広告は目立って認知を得ることろから始まるという法則で考えられていたんです。

しかし、SNSをずっとやっていくと、「ATTENTIONうざいよね。IMPACT(インパクト)ウザいし、声大きいやつ、ウゼえ!」というようなことを肌身で感じていて、当時、「どうもモデルが違うんじゃないか」思っていて、それでSIPSに。

いわゆるシンパシーから始まる。本当はエンパシーかも知れませんけどね。

Sympathize(共感する)から始まって、Identify(確認する)、Participate(参加する)、Share & Spread(共有 & 拡散する)というシップスで動いていくモデルを作ってみたんですよね。

当時の電通からは物凄く反発を受けました。なぜかと言うと、「佐藤、お前ATTENTIONが終わるって事か?広告はATTENTIONだろ?ATTENTIONをなくすってどういう事だ」って、社長呼び出しを受けましたね。

佐渡島

では、「ファンベース」と言ったときに、ファンはどんな人と定義されているんですか?

佐藤

ファンはいわゆる「こういう商品を買った!」とか、「割とこれよく買うよね」っていう人ではないんですよね。

例えばその商品の裏側にある考え方とか、その企業が持っている志とか、そういった背景も含めて支持してくれる人。もしくは大切にしている価値を支持してくれている人という風に僕の中では思っています。

佐渡島

商品を知ってくれている人と、商品の価値を知ってくれている人。全然違うっていうことですね。

佐藤

違うというか、入り口は商品を知らないとダメだから、そういう意味では広いアテンションは必要なんですよ。認知は必要ではあるんですけど、その商品自体や背景などを知ってくれるという意味では違いますよね。

佐渡島

それでファンを作るためにやる事と、アテンションを取るためにやる事は随分違うというお話なのかなと思うのですが?

佐藤

それでいくと少し違っていて、ファンを作る必要がないんです。要するに、今もファンがいるはずなんです。

特にお店を出していてある程度まわっているのであれば、ファンを作ったり増やすという前に、今現在ファンの人や、ちゃんとこっち側を見てくれている人はいるはずなので、まずそこを大事にするべきじゃないのかなというお話ですね。

 

ファンを大事にするための第一歩

 

佐渡島

ファンを大事にするための第一歩は、どのようなことでしょうか?

佐藤

ファンを大事にするために感情をちゃんと作っていくということは非常に大事ですね。

売り上げがキープされるという前提ですが、いわゆるUSPってあるじゃないですか?ユニークセリングプロポジション。

つまり、差別化されたポイントですよね。それが企業価値だとすると、そういったものってすぐに追いつかれちゃうんですよ。今まで広告にしても何にしても差別化されたポイントをコピーにして、差別化されたポイントを訴求点にしてCMを作ったり、雑誌広告を作ったりするんですけど、それって必ず他社に追いつかれるし、違う付加価値を付けられて、どんどん抜かされていくっていうことが起こるわけですね。

よく例であげるのですが、30分で届くドミノピザ。USPも良いんですが、“30分で届く”を訴求している限りピザーラでもピザハットでも良いわけですよ。

なので、そこをやるんじゃなくて、「俺はドミノピザが好きなんだ」っていう感情を作っておかないといけない。そういうのをちゃんと作らないとファンには出来ないんです。その感情を少し分析していくと、僕は【共感】【愛着】【信頼】だという風に考えています。

佐渡島

共感、愛着、信頼ですか!?

佐藤

「共感」も「愛着」も「信頼」も感情なんですけど、そういうものをつけるということ。30分で届くということで勝負をしていたのではなかなか勝てない。抜かされちゃうし、追いつかれるし、真似されるという事が起こる。

佐渡島

共感、愛着、信頼って言った時に、それぞれ作り手側がそのファンの為に共感を生む為にやる事と、愛着を生むためにやる事と、信頼を生むためにやる事が違うと定義されてるかなと思うんですけど、どんな感じの事をやれば共感が生まれるんですか?

佐藤

「共感」というのは、例えば商品やブランドの持ってる価値を強めていくこと。

つまり共感って、「そうそう俺そういうの好きなんだよ」っていうのが共感ですよね。そういう“価値を強める”ことを共感と言っています。

「愛着」は、似たような商品は色々ありますよね?しかし、他に代え難い価値や愛着という感情によってそういうものを作るっていうのがやっぱり大事だと思うんです。

これを愛着と言っています。

そしてもう一つはこれを作っている提供元の企業の「信頼」。ある程度信頼をしていないと、それって支持が強まんないんですね。

実は、イメージと共感だけでやるのではなく、ちゃんと商品を作っている企業ですとか、こういった活動もしている企業ですというような、提供元の信頼ですよね。

佐渡島

共感、愛着まではプロダクトに対するものだけど、信頼は人にまでいっちゃってるって事なんですね。

佐藤

人にまでいきますね。社員にもいくし。企業の普段のふるまいにもいきますね。

佐渡島

なんか共感、愛着、信頼へとうまく作っていった、実際目にした例というか、さとなおさんがこれはすごいなって思った事例はありますか?

佐藤

いや、総合的にこれ全部というよりは、部分的に、ああいった部分、こういった所が良いねという企業はあるんですね。補足していった感じですね、実際は。

全部を完璧にやってるのはどこですかってよく聞かれるんですけどが、全部やる必要はないんですよ、実際には。

結構事例を欲しがる人が多いんですけど、ケーススタディではあるが、そのケーススタディから本質を導けばいいんだけど、何か表面的にみんな安心しちゃうんですよね。

なので、この事例がいいですよっていうの割とやめているんですよ。再現性も無いし。

佐渡島

なるほど。

さとなおさんは電通を辞められてから、さとなおラボみたいなものをご自分で数年間されていますよね。

 

さとなおオープンラボとは?!

佐藤

そうですね。広告コミュニケーションからのプランニングを体系化したのがラボですね。

いわゆる広告、広報、宣伝、コミュニケーションとかの業界って、丁稚するんですよ。先輩の背中見ろ!みたいなね。盗め!ぐらいな感じです。意外と体系化して教えてくれないんです。

でも僕から言わせると、30年やってきて丁稚しなくても近道はあるわけなんですよね。「ここはこういう風に押さえてきてこういう風に考えると、意外と整理しやすいよ」っていうのが、僕はあると思ってるんですけど、実際は誰も教えてくれない。

しかも、テレビは詳しい人が居る。新聞コピーとか、新聞メディアに詳しい人が居る。ネット詳しい人が居る。ソーシャル詳しい人が居る。でも全部を結び付ける事の出来る人があまり居なかったんです。

僕はたまたまコピーライターから入って、CMプランナー、ネット部門の立ち上げ、コミュニティデザイン、ソーシャルもやって、全体をやってたんで、「そこ意外と線引けるな」みたいな。「コネ作れるな」というのはあったんですね。

電通の時もそう思ってたし、電通辞めてからもそう思ってたんですね。いわゆるちゃんとそこを共有してできる。みんなそういうのを知りたがってるから、僕が考えてる事を共有しようかなっていうのがラボの始まりです。だから体系化しただけです。

佐渡島

ラボをやっているなかで、さとなおさんの考え方に変化はありましたか?

佐藤

ものすごい変化するわけですよ!

ラボをやってて良かったのは、僕が説明し、ある程度フィードバックがきて、分からなかった人が分かってきて、しかも説明していくとどんどんそれが蓄積される。

まあ教えるのが一番勉強だってよく言うじゃないですか?あれと同じで、説明してるうちにだんだんだんだん、「あれ?ここは俺ずっとこう説明してるけど、ちょっと違うんじゃないか」とかが出てきて。

だから今ラボは9期までやってるんですけど、1期2期、2期3期と少しづつ変わってきていて、意外と3期から4期とかその辺りがまたジャンプアップして、また6期から7期がまたジャンプアップしてっていう風に随分変わったりするんですね。

今でも自分を更新するためにラボは辞められないんですよね。頻度は落としてますけど、やるたびに発見があります。

佐渡島

広告を体系化して、もはや広告ではないかも知れないですけど、広告コミュニケーション、ファンベースのさとなおさんの中にある知識を体系化して伝えるものであるっていうのは変わってないですか?

佐藤

それは変わってないですね。教えるんじゃなくて共有だよって言ってるんですけど、これは僕の考えを共有してるっていうのにすぎませんけど、それを体系化してみんなに伝えるっていうのは変わってません。僕は型を言ってるだけなんで、型をやった後はみんな自由に型破りしてくださいっていう思いでリリースしますね。

佐渡島

なるほど。具体事例を言っちゃうよりも型を凄く大切に考えるという。

佐藤

そうですね。毎回この相手の場合はこうやってやったら有利かというのは、体系化じゃないんですよ。全員どういう人が来ても組める。組手が出来るっていう体系は必要な気がしますけどね。

佐渡島

といった時に、さとなおラボの考えとして一番初めに共有することって何から伝えるかは決まっているのですか?

 

大切なことは何が目的であるかということ

 

佐藤

目的からですね。

大きく言うと「目的」と「基礎」と「俯瞰」という大きく3つやるんです。

「基礎」は、昔の考え方から今の考え方までずっと歴史を追うんです。今の時代ってちょうど全部が使えるんです。例えば東京とかに住んでいて、二子玉とか歩いてると、ネットの時代だよねってみんな言いますけどネットなんか使ってない人ってものすごくいっぱいいる。地方に行くともっと多い。ネット使ってない人はおそらく1億2000万のなかに6〜7000万人はいるでしょう。

なので地方では、昭和時代っぽいテレビ広告とか、新聞広告で十分にアテンションがきくわけですよ、広告が。

都会になってくると、コミュニケーションとかその向こう側にあるプランニングとかファンベースに移った方がいいですけど。そういう風に進化の過程が全部使えるので、それも含めて一回昔のやり方から一番最新のやり方まで全部追うんですね。これが基礎になります。

具体的に言うと、トップダウン広告と、コミュニケーションデザインと、今はファンベースっていう3本柱でずっと追っていくのを基礎というふうに位置付けて、「俯瞰」というのは、相手はネットの担当だったり、PRの担当だったりイベント担当だったりみんな部分をやるわけですから、部分をやるだけだとやっぱり見逃すこともいっぱいあるし、転職したり、辞めたいとか今は流動性高いので、なるべく全体を見るとこうなってますよということを伝えるようにしています。

佐渡島

では「目的」というのはどんなことですか?

佐藤

「目的」は、そもそも企業とか、その商品の目的ってなんだろうと一回振り返っていくこと。こういうのって課題解決の為にあるんですよね。生活者の課題。喉を乾いたっていうことを美味しく解決するのがこの商品とか。美味しく解決して笑顔にするとか、喜んでもらうっていうのがこの商品の目的。

要するに、プランニングって何のためにするかっていうのが割とごちゃごちゃになるんですね。売上を上げるためっていう人も居るし、認知をとるためっていう人も居るし、いやいやコンバージョンだとか。その為にプランニングするんだとかって色々みんな出てくるんですけど。

ちゃんといいものを伝えて、生活者に届けるっていうその過程にプランニングはありますよね?プランニングの目的も、「生活者の課題を解決して笑顔にする」ことであるっていう風に僕は捉えてるんです。そこを忘れるのやめようって。SNSでいいね!を取るとか、RT増やすっていうのは手段の手段の手段だから。

大きな目的は課題解決をして笑顔にすることなんで、そこを常に考えてプランニングにしないとなんか見逃すよねっていう事が頭にあるんです。最初はポカンと聞いてるんです。「え?笑顔ですか?」みたいな感じなんですけど、実際はそこが最終的な目的なので、これがちゃんと届けられれば人は喜ぶはずなんです。なのでそこを見失わない様に、常に一回立ち返る様にはしてますけど。俯瞰は常に意識して。

佐渡島

3ヶ月に1度ぐらいでやられるんですか?

佐藤

10回。たった10回です。本当は2時間っていう約束なんですけど、だいたい1回につき5時間ずつやります。

佐渡島

おお!それは長いですね。でも面白いですね。それだけ体系化してもらえていると。

佐藤

まあ正しいかどうか分かりませんけど、ある種、僕が30年かけた型は伝えられるかなと。

佐渡島

なるほど。こういう風な型を作ることは以前からご興味があったのですか?

佐藤

興味があったし、そういう人が居なかったので。プランナーってそうやってちゃんと体系化して人にちゃんと伝えていかないものなんだろうって。そうしたら積み重ならないじゃんって思うんですけど。業界全体的にね。

佐渡島

出版業界も同じですね。編集者って完全に属人的ですからね。

 

個性と型

佐藤

体系化は、一回するとまたその欠点が見えてくるので、どんどんうまく良い感じになってくるんですよね。それ、凄い大事だと思いますけどね。逆に言うとみんなよくプランニングできるなと思いますね。

イチローでも最初に自分の型があって、バッターボックス入るときちゃんと型で入っていく。しかも必ず凄い練習した後に、凄い基礎をやるじゃないですか。思いつきや勘でやってるなら逆に天才だなって思いますね、それで凄く成功している人達は。僕そこらへんは毎回再現出来ないんで、毎回1人自分で戻って型をやるんですよね、プランニング前に。

佐渡島

イチローは型があるから長期間プレー出来てるのかなって気がしますね。

佐藤

まあでもクリエイティブはそうあるべきみたいな所はみんなどこかで思ってると思いますね。型なんかダサみたいな感じに思ってる所あるんじゃないですかね。

佐渡島

そうですよね。個性を大事にっていうと、型がダメってなりすぎるなっていう気がするんですよ。

佐藤

いや本当に。個性って僕なんか型破りだったりするんですけど、それって型がないと個性にならないんで。料理もそうで、創作料理ってあるじゃないですか。創作料理って型が出来た人がやる創作料理って素晴らしいんですけど、何も基礎が出来てない人がやる創作料理ってホント思い付きの芯がない味になりがちなんです。

佐渡島

はい、分かります。

佐藤

ただ型が出来た人たちが居ると、意外とちゃんとした創作料理になる。そこは随分違うんですね。

佐渡島

でもそういう人達って、自分は和食だとか自分は中華だとか自分はフレンチだって言いながら、食べた人がこれはもうフレンチじゃないみたいな、こっちがもう枠を超えてるって思うのであって、やってる人達は自分が何の型を元にしてるかっていうのを明確に言ってますよね。

佐藤

だから一時期アメリカとかニューヨークでフュージョンが流行って、例えばジャパニーズイタリアンとかね、メキシカンフレンチとかベトナミーズフレンチとかそうやって出るんですけど、後ろ側のフレンチっていうのが型なんです。そこにベトナムの要素が加わっているかっていう。それは凄い良い流れになってるので、多分ミックスされてもいいですね

佐渡島

そうですね。どっちかが型になるっていう。

今、さとなおさんはファンベースっていうやり方を、完全な型として色んな人が使えるようにして行こうと思ってコンサルをされているのですか?

佐藤

まあコンサルって言葉あんまり好きじゃないんですけど、『ファンベース』も本を書いてみると色んな発見があり、自分でもまだ随分改善が必要ではあり改善中ですけど、ただ、いま体系化したことに基づいて、色々やってみてる最中ではありますよね。

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