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「これからのEコマース」①

2019.04.09

P.B.I 高木 孝 氏 × フィル 濱本 廣一 氏 × テラオ 佐々木 伸一 氏
EC業界を牽引する3名による「これからのEコマース」がテーマのトークセッション

BACKYARDFES. 2018 GUEST TALK

Profile

BACKYARD FES.2018 テーマは『FAN』
ECのドキドキ感をリアルに感じるバックヤードが主役のイベント
2018.10.5-6

Shop

P.B.I「SILVER BULLET」 https://www.rakuten.ne.jp/gold/silver-bullet/pb/
フィル「壁紙屋本舗」 https://www.rakuten.ne.jp/gold/kabegamiyahonpo/
テラオ「自転車グッズのキアーロ」 https://www.rakuten.ne.jp/gold/dandelion/

GUEST TALK@BACKYARD FES.2018  

People

高木 孝 氏(中央)
株式会社ピー・ビー・アイ代表取締役。専門学校卒業後、紆余曲折を経て有限会社パワーボムに入社。2005年「SILVER BULLET」をEC展開させる新規プロジェクトに着手。2008年9月、EC事業のより一層の発展を目指し、同社IT・EC事業部を分社化、(株)P.B.Iを設立、代表取締役に就任。
・楽天市場ショップ・オブ・ザ・イヤー2007 モバイル賞、メンズファッション・靴ジャンル賞
・楽天市場ショップ・オブ・ザ・イヤー2014 メンズファッションジャンル賞
2016年秋に発足したプロバスケットリーグ「B.LEAGUE」の1部チーム「横浜ビー・コルセアーズ」の共同株主となり、オフィシャルグッズの製造、販売を試合会場やECサイトで行うとともに、さらなるスポーツビジネス分野への事業を拡大している。「一日のはじまりをしあわせに。」をコンセプトに食パン専門店を共同オーナーとして事業スタート。2017年10月7日に東京の南⻘山にVIKING BAKERY F( バイキングベーカリーエフ)をオープン。EC事業で培ってきたモノを基盤に今までにない新たなカルチャーを創り始めている。

濱本 廣一 氏(右)
株式会社フィル代表取締役1972年生まれ。2000年リフォーム素材のネット販売サイト「壁紙屋本舗」を開始。
・楽天市場ショップ・オブ・ザ・イヤー2014年度 インテリア・寝具・収納ジャンル賞 受賞
・楽天市場ショップ・オブ・ザ・イヤー2004年度 不動産・住まいジャンル大賞 受賞
2011年に輸入壁紙専門サイト「WALPA」を開始。2012年2月から実店舗「WALPA STORE」をスタート。2015年11月には本社のある大阪・大正「WALLPAPER MUSEUM WALPA/OSAKA」をオープンし、東京、大阪を含め3店舗を構える。2016年11月にはUR都市機構と大正区と連携し、大阪市大正区のUR千島団地に壁紙屋本舗LABをオープン。全人類職人化計画を掲げ、世界一の壁紙屋に向け突き進んでいる。

モデレーター:佐々木 伸一 氏(左)
テラオ株式会社取締役EC部マネージャー。岩手県大船渡市出身の45歳。前職である日本酒の造り酒屋「あさ開」(岩手・盛岡)に当初はレストランのスタッフとして採用。2001年より正社員となり、2003年に右も左もわからないまま楽天市場に出店。⻑くてくどいメルマガとコテコテの接客で売り上げを伸ばし、在籍中に楽天ショップ・オブ・ザ・イヤーを7度受賞。2014年8月に結婚を機に「あさ開」を退職し大阪に引っ越し、妻の家業であるテラオ株式会社に転職。現職「自転車グッズのキアーロ」は4年間で売上が400%伸長。

“Eコマース“の定義とは?

佐々木

昔と比べてEC(Eコマース)と呼ばれるものの意味が変わってきているような気がするのですが、お二人はどのように定義されていますか?

簡単に言うと、買い物カゴから後の「カート投入決済」「配送」の事をいつの間にかECと呼ばれている気がしていて、私はその事に凄く違和感を感じているのですが、お二人とも15年〜20年近くECに携わっていらっしゃいますがどのようにお考えでしょうか。

濱本

僕の場合は、何となく日本全国で商売をしたいと思っていたので、当時ECが出てきて、自然に入っていったという感じです。特別「ECをやってます!」みたいな意識はあまりないですね。

佐々木

なるほど。あくまで商売があって、やりたい事が先にあって、インターネットを使った方が色んな人に発信できるからということだったのですね。

濱本

一人一人に伝える事も大事だと思うのですが、弊社はハウトゥーや商品説明だけで終われないところが多いので、一番表現しやすかったのがECというインターネットを使った商売のやり方だったのかなと思います。

高木

僕はもう17年も前からになりますが、楽天市場さんに出店しています。ECが「ネット通販」なのか「単なる通販」なのかという時代から、今はECって呼ばれていて確かに少し違和感がありますね。

ECの定義ということですが、いまは“買う方がどのシチュエーションで買うか”という多様性がある時代になっていて、例えば楽天Pay、amazon pay、LINE Payなどで買い物が出来ますよね。また、例えば楽天さんだったら楽天ポイントが貯まっているからとか、それぞれのフィールドで買う理由というのがあると思うんですね。 

Pay体験@BACKYARD FES. EC MARKET

高木

今はもう、物があるだけでは中々難しくて、探せば探すほど商品があるし、どこで買ったらいいか迷っている状態。でも、1日24時間という時間は変わらないなかで、やりたいことはどんどん増えていくし、YouTubeは面白いし、コンテンツに溢れていて寝る時間がないくらいのこの世界でECの定義はすごく変わってきていると思います。ただ物を買うっていうだけだと別にどこでも買えるっていう話になるので、まさにターニングポイントだと思います。

佐々木

そうですね。15年前と比べてネットに繋がっている時間が長くなっていて、それはスマートフォンの影響が大きいのですが、この10年くらいは特にそうですよね。

だけど最近思うのは、ネットでの買い物にかける時間はどんどん短くなってきているということです。ワンクリックで物が買えるとか、すぐに探せるとか、もちろんそれは必要な事でもあるのですが、本来ならば知らない世界を知るとか、世界が広がるとか、あるいは単純にコンテンツとして面白いとかっていうのも昔は込みだったと思うんです。メルマガもそうだし。ただそれが今は分業化してきているのかなと最近すごく感じています。

つまり、インターネットはいわゆるECサイトだけではなく、そこですべてを完結させないほうがいいのではないかと思っています。あとは、「EC化率(インターネットで物が売れている比率)」が、日本は約6%で、94%はネット以外の所で物が売れているわけですよ。

弊社に関して言うと、その6%の中で、しかもモールならモールの中だけで競争しているという凄く小さい世界でイケていない事をしてるっていう感覚がここ最近強くて、これは残り94%の方に行かなきゃいけないんじゃないかなと思っているんですね。その残り94%の人たちが振り向いてくれるために何か考えられていること、あるいはもうこんな事やってるよということはありますか?

 

 ECサイトで商品を購入しない人へのアプローチ方法は?

濱本

弊社は壁紙を扱っているのですが、「壁紙」って検索されたことありますか?

実は壁紙ってほとんど検索されないんですね。そういった出会いの場としては、ネットはまだまだ低いなと思っているんです。ですので、路面店を出したり、全然興味がない人が知ってくれるきっかけをお店やイベントで伝えていかないとそもそも知られない、検索されないという商品なんですよね。

佐々木

検索というか、そもそも自分で張り替えるものだとう頭がないですね。たまたま濱本さんと知り合ったから知ったけど、壁紙が破れたとか、変えたいって思ったら、まず施工業者さんに相談するために検索すると思うんですよね。

壁紙屋本舗@BACKYARD FES. EC MARKET

濱本

「壁紙」を自分で検索する人はまだまだ少ないのが現状です。だからこそ、誰もやってない事を一番にやって、テレビなどのメディアで取り上げてもらえるようにしようと思い、プロジェクションマッピングで壁紙を変えたり、VRを活用しているということなんですよ。

佐々木

なるべくたくさんの人の目にまずは触れるということを大事にしているんですね。

その中から「これおもろいやん!」っていう人が出てきたら良いですもんね。

濱本

「あ!貼れるんや!」って気付いてもらう。壁紙を自分で選ぶことが出来る店があるということを知ってもらえたら良いかなというところですね。

 

そもそもECって何?

高木

最近、そもそもECって何だろうって凄い疑問に思っているんです。ECという言葉自体も普及していないし、だからまだまだEC化率6%なんだと思っていて。

今、ここに出店している人達の商品はネットで買えるじゃないですか?でも、お客様が知るのはこのイベントだったりするわけですよね?ここに来て初めて「壁紙屋本舗」を知るとか。

その知ったあとに商品をネットで買ったとしたら、それはECなんですか?

僕たちは洋服がメインなので、お客様からするとお店に行って試着をするけど、ネットで買えることを知っているからポイントが付くネットで購入する。それはECなんだろうか?

逆に、ECサイトで商品を見て、お店で試着して店員と話しながら商品を購入する。じゃあこれは何Cなんだ?と、思いませんか?(笑)

今後、EC化率は14%になると言われていますが、6%から14%になる差分の8%は、僕らの影響ではないところでの数値が乗ってくるとして、同じことをやっていたのではどんどんシュリンクしていくような時代だと思います。だからいかに商品をより多くの人に知ってもらうか。しかしインターネット上だけでは限界がある。

Viking Bakery F@BACKYARDFES. EC MARKET

高木

僕たちは洋服がメインでありながら、パン屋さんを始めました。ECを専門としてきた僕らがやってきた事を、パン屋で何かフィードバックできないかと。今、自分たちがやっているリソースを使って、パン屋をやったらどんなパン屋が出来上がるんだろう?って。でも、これは何Cなんだろう?

僕はこれをECだと思っているんです。

たまたま買う場所がお店なだけで、サービスのバックボーンがECだとしたら伸びていくはずだなと思っています。

さらに、今は百貨店やセブンイレブンなど、これまで参入していなかった業態のECサイトが増えていくので、要は差分8%の椅子取りゲームをしていくということになります。

これをどう考えるか、どうやって対策していうかというのはすごく大事なことだと思っています。

佐々木

そもそもネット通販とかECっていう言葉がもうおかしいのかもしれないですね。

例えば、昔から事業をされていて、電話で注文を受けたりFAX注文があったと思うのですが、「FAX通販」はもしかしたらあるかも知れなけど、「電話通販」という言葉ってないですよね?

TC(Telephone Commerce)とか言わないですよね?FC(FAX Commerce)とか?さっきの話ですと、チャネルの一つであり、手段の一つ。だから何か1個だけやってればいい時代ではないんだろうなと思いました。

ネットの特性として不特定多数を相手にできる。ただ、お客様目線になった時に、例えば弊社だと「自転車のチャイルドシート買おう!」と思ったとき「私の自転車に合うのはどれなんだろう?」という目線で見られます。

しかし、売り手は別に弊社だけじゃないわけですよね?

それこそ何百社の競合でも中には同じ商品が取り扱われているところもたくさんありますが、やっぱりその中でも「ここで買いたいな」って思われる何かが大事なんですよね。

多分、商品自体のクオリティも大事ではあるんだけど、そんなに差ってないと思うんですよね。でも、売り上げに差が出てきてしまうというのは、やっぱり今回のテーマの一つでもある『FAN』。支持してくれる人が居るということですよね。その人達が買ってくれたり、口コミしてくれたりするのが、他の方が見た時に行列ができる繁盛店的に見えて、じゃあ並んでいるからあそこにしようとより人を呼ぶ感じになっていくのかなと。

 

FANづくりについて

佐々木

ヤッホーブルーイングさんは、ただただ軽井沢まで行ってビールを飲むというファンイベントをされていますよね。話だけ聞いてると、そんなの成立するわけない!って思うんですけど、すさまじい勢いで成立していて、今度は逆にファンの方が自らイベントを企画されていたりするんですよね。凄すぎて意味が分からないって思いますよね。

あとは、バスケチームのグッズですね。Bリーグの開幕時期にチームグッズを求めるサポーターやバスケファンの方々がいて、贔屓のチームのグッズを身につけたいからということで購入します。しかし、高木さんがオーナーをしているビーコルだけは明らかに異色ですね。

きっと他とは違う支持のされ方があると思うんですが、知ってもらう事も大事なんだけど、その次の段階として“選ばれる”ということがもの凄く大事ですもんね、「ファンづくり」って言えばいいのかな。

改めてお二人は、自分たちのやっていることを「面白いね」とか「それいいよね。私、あなたの会社好き」って言ってくれるような人達と、どうやって出会ってどう付き合っていますか? 

高木

そうですね、これは各々がECをどういう風に捉えるかっていうのが凄く大事で、簡潔に言うと僕は「人と人が出会う」のは「ECである」と、何となくずっと思っているんです。

プロスポーツの特に野球やサッカーは、チームグッズを売っているのは売っているけど、EC事業者が日々行っているような改善やクオリティコントロールはあんまりやっていないんですね。

僕らはずっとベースがECなので、スポーツという世界に参入したとしても考えることはECのこと。「もっとこういう施策をやれば良いのにな」と、他の企業に思うことが多いです。

それは僕たちが10数年やってきているアドバンテージなんですよね。つまりスポーツとかファンとかグルメとか何でも良いのですが、彼らが0から始めるECだったら、僕らがやった方が早いんですよ、絶対に。

多少環境の変化とか、習慣とか文化はフィットさせなきゃいけない部分はあるにせよ、僕らがパートナーとして今あるンテンツをECと掛け算してこれからの商流というか、ビジネスに乗せていくというのはECにしか出来ないことだと思っています。

そしてこのチームグッズですが、普通は試合が終わったら使わないわけですよね?でも、試合っていうのは特にバスケは1年間に60試合しかないんです。1年間365日で、305日は試合がない日。その試合がない日もファンで居てもらう方が良いわけなので、例えば小学生が毎日使う筆箱が好きなチームのものだとか、お父さんが週末着る服が好きなチームのものになり、常にファンの近くにチームを存在させられると良いですよね。

それが結局、「試合を見に行こう」というフックに繋がっていて、ECに力を入れた瞬間、365日チームを好きになってもらうためという「役割」が生まれるんですね。

濱本さんは、壁紙のファンの方がどういう特性か解析しているんですか?

濱本

あんまり解析してないですね。

だだ、毎回マーケットに来てくれる人や、ほぼ年に一回お店に来てくれたり、必ず年に一回貼り替えてくれるという人もいますね。

佐々木

それはどれくらいの頻度で貼り替えるんですかね?気分次第?1回貼るとどれくらい使えるんですか?

濱本

お店に来てくれる人のなかには毎週来て、「トイレやりました」「リビングやりました」「寝室やりました」と、報告してくれる方もいますし、毎年来てくれる人もいるしね。

家の壁が全部終わるまでという方もいらっしゃるけど、平均は3年周期かな。

高木

なるほど。佐々木さんは自転車のチャイルドシートがありますよね。ファンづくりはどうされているんですか?1回買ったら終わりでしょ?それを買っていただいた方にファンになってもらうにはどうされているんですか?

佐々木

4年前からいわゆる仕入型番商品、つまり、弊社以外でも売っているし、うちは別に最安でも最速配送でもないので、そこでは勝負していないんですよね。

そうなると、僕は前職が日本酒メーカーだったので、やはり違う業界に入ると、それまでの業界でやってきた当たり前が、「何でこんな事やらないの?」とか、違和感として見ていたんですよね。

確かにチャイルドシートは、単価も高く、お客様が検索して勝手に見つけて、売れていくという商品だったのですが、その高単価商品であるチャイルドシートを買った人に対してメルマガでコミュニケーションを取りながら、周辺商品の情報を提供していったんです。

例えば、いいカメラ買うと、ケースも、レンズもいいものが欲しくなるじゃないですか。

チャイルドシートの場合は、雨の日は「レインカバー」が欲しくなったり、お尻が痛いと思ったら「クッション」が必要。寒い日は「防寒グッズ」も欲しくなるという心理があるんですね。

あとは、世の中のママチャリの9割は実は適正空気圧で走ってないんですよ。

つまり、空気が全く入っていない状態で走らせている。本当は週に1回空気を入れないといけないんですよね、パンパンになるくらい。それを知らないでしょ?っていう情報をフックにお客様とコミュニケーションしているんです。要はお客さんの基礎知識を上げて、選択肢を増やすっていう事をやっています。

最終的に、「自転車だったらこの店」という感じで、愛着を持って信頼して付き合ってくれるというのはあり得るんじゃないかなと思っています。

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